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元野木書店 元野木さん

元野木書店 専務取締役 元野木さん
140年以上続く商店街にある本屋。地域全体で商店街を盛り上げる
明治10年に創業した元野木書店の専務取締役として働く元野木正比古さん。飯塚で生まれ、大学進学を機に関東へ移り神奈川、東京で学生生活を過ごす。当時は、「手に職つけて一人で生きていく」と実家である書店を継ぐ気がなかったという元野木さん。
卒業後は臨床心理士として、子ども達を療育する職場に勤務。数年後、書店の後継者として話しが出始めた。ちょうど仕事で悩んでいた時期。「140年以上続いている本屋を自分の代で終わらすのは、もったいないと感じていました。長期休暇で飯塚に帰省し、店舗経営面を確認したところ、まだやれることがあると思い、引き継ぐことを決意しました」。
その後、商いの経験を積んで店舗づくりのノウハウを得るために、埼玉県でセブンイレブン・ジャパンに3年間勤務。2016年に地元である飯塚市に戻り、東町商店街にある店舗を受け継ぐ為、現職に就く。

大正時代の写真。右端が元野木さんの曾祖父
商店街にあるお店だからできることを
倉庫として使用されていた2階に机や椅子を配置し、カフェスペースとしても使えるスペースを2019年にオープン。『モトノキノウエ』と名付けた。当初元野木さんは若い人がたくさん訪れるのではないかと思っていたが、意外にも年配の方も昔の様子を思い出しながら“懐かしい”と訪れてくれるようになったという。「こんな本を買ったよとか、ここに絵を飾ってもらったんだとか、そういう話が聞けることが嬉しかったですし、商店街って思い出の場所なんだと思いました」そして同時に、現在の若者にも同じような体験をしてもらいたいと思うようになったという。「ずっとある建物があるからこその思い出を我々は守ってきたんだなと痛感しましたし、今の子ども達にも“懐かしい場所”を作ってあげられるように、より意識して活動に取り組むようになりました」

店の前に置いている黄色いのぼり旗は、若い世代に向けて認知向上のための取り組みの一つ

かつては倉庫になっており使用されていなかった2階もゆっくりと過ごせるスペースに。
今ある場所に新たな価値を見出す
「2階のスペースを整えたら人がいっぱい来てくれるようになりました。元々そんなスペースにしたいと思ってたのですが、お金をかけて変えていくスタンスはちょっと違うなと思っていたんです」元ある場所はそのままに一工夫して生まれ変わらせる元野木さんの活動はいつしか口コミで広がり、「ここも空いてるからなにか面白いことしてみたら?」と紹介する人が増えてきたという。場所を紹介してくれる人。一緒に取り組みましょうと言ってくれる人。パーツが揃い『スキマニヤモリ』の運営が始まった。
活動内容は、市内にある空き店舗のリノベーションを進め、街の賑わいを創出すること。「空き店舗があれば経営をしてみたい」と話す人が意外と多いことに気づいた元野木さんが同世代のメンバーと立ち上げた。人が集まる場所を作りたいと、リノベーションをした第1号店『シカクデパートメント』現在は貸しスペースの4箇所は全て埋まっている状態だ。問い合わせの電話はまだ鳴り続けており、2号店も準備中だという。

『シカクデパートメント』の外観。1階はカフェラテ屋。2階スペースは準備中。
「シャッター通りなど商店街は元気がないと思われていますけど、発想や着眼点次第で、何でもできる可能性が秘めていると感じています。新しいことにチャレンジしたい人がいれば、一緒に盛り上げていこうという土壌がこの場所にはありますね」。地域全体で商店街を面白くしていくことを大切にしている元野木さん。そのひとつの可能性が各イベントであり、街にひとつでもこういった場所があることで、新しい挑戦を始める人が増え、その周辺に面白い場所が増えていく。
【氏名】元野木 正比古 【出身】飯塚市(Uターン)
【取材時の年齢】39歳 【移住歴】5年
【PROFILE】福岡県飯塚市生まれ。1995年、愛光中学校入学とともに福岡県飯塚市を離れ愛媛県松山市へ。2001年、大学進学を機に関東へ移り神奈川、東京で学生生活を過ごす。就職、結婚、転職は東京、埼玉を舞台とし地元飯塚への帰省は長期休暇のみ。2016年、実家の元野木書店へ戻り現在は専務取締役として書店業務に勤める。明治10年創業の書店を継ぎ、7代目となる。『モトノキノウエ』や『シカクデパートメント』など、空きスペースを活用する取り組みを行っている。







