○飯塚市の子どもをみんなで守る条例

平成30年12月28日

飯塚市条例第43号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第12条)

第2章 児童虐待の予防のための子育て支援(第13条―第16条)

第3章 児童虐待の防止等のための取組(第17条―第26条)

第4章 雑則(第27条―第30条)

附則

もうやめて もうゆるして もうたたかないで

そう思いながら命を奪われた子どもたちがいます。

そう思いながらじっと耐え続けた子どもたちがいます。

いたるところで食料が捨てられる時代に、飢えて亡くなった子どもたちがいます。

性的虐待や心理的虐待を受け、心を殺されたという子どもたちがいます。

助けられたはずの命、奪われた笑顔と育ち。

本来、祝福されて生まれ、愛されて育てられるべき子どもたちの中に、今も、苦しみ、誰かの助けを求めている子どもがいます。

子どもは、ひとりの人間であり、安全で安心して生きる権利を持ちますが、ひとりでは生きていけない、弱い存在です。

その弱い存在の子どもの笑顔と笑い声に、私たちおとながどれだけ勇気づけられていることでしょう。

子どもは親にとっての宝だけでなく、社会の宝、活力の源、未来への希望です。

その子どもを守るのは、わたしたちおとなの責任です。

全ての子どもたちが、虐待や育児放棄から守られ、愛される幸せを実感しながら成長できるように、市民みんなで、子育てしやすい環境をつくり、子どもの命と育ちと笑顔を守るため、この条例を制定します。

みんなで子どもを守りましょう。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、児童虐待の防止等について、基本理念を定め、市、保護者、市民等及び関係機関等の責務を明らかにするとともに、児童虐待の防止等に必要な事項を定めることにより、児童虐待の防止等を図り、もって、次代を担う子どもの命を守るとともに、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 子ども 18歳に満たない者をいう。

(2) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護するものをいう。

(3) 児童虐待 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童虐待(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト及び心理的虐待)をいう。

(4) 児童虐待の防止等 児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた子どもの保護及び自立の支援をいう。

(5) 市民等 市内に住所又は居所を有する者、市内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体、市内に存する事務所又は事業所に勤務する者並びに市内に存する学校に在学する者をいう。

(6) 関係機関等 学校、児童福祉施設、病院その他子どもの医療、福祉又は教育に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、弁護士その他子どもの医療、福祉又は教育に職務上関係のある者をいう。

(基本理念)

第3条 全ての子どもは、愛され、安全で安心な環境で適切に養育されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

2 児童虐待は、子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、将来にわたって子どもを苦しめる重大な人権侵害であり、ひいては子どもを死に至らしめる危険をはらんでおり、これを決して行ってはならない。

3 児童虐待への対応は、子どもの最善の利益に配慮するとともに、子どもの安全を最優先に考えなくてはならない。

4 何人も、児童虐待を見逃さないよう努めるとともに、児童虐待のないまちづくりを推進し、子どもの安全と健やかな成長が守られる社会の形成に努めなければならない。

(基本方針)

第4条 児童虐待の防止等は、次に掲げる基本方針により行うものとする。

(1) 児童虐待の予防には子育て家庭を支えることが重要であることから、地域と行政とが連携及び協働をし、子育て家庭を支援すること。

(2) 子どもを児童虐待から守るには地域と行政とが一体となって取り組むことが必要であることから、地域と行政とが連携及び協働をし、児童虐待の防止等に係る取組を行うこと。

(市の責務)

第5条 市は、児童虐待を受けた子どもの安全の確保を最優先としなければならない。

2 市は、子どもの人権、児童虐待が子どもに及ぼす影響、児童虐待の予防のための子育て支援施策、児童虐待の通告義務等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

3 市は、子どもが児童虐待から自らの心身の安全を確保できるようにするため、関係機関等と連携し、子どもに対し、情報の提供その他の必要な事業を実施するものとする。

4 市は、警察、関係機関等及び地域社会による児童虐待の防止等のための取組に対する積極的な支援に努めなければならない。

5 市は、児童虐待の防止等に関する施策を推進するための具体的な年次行動計画(以下「年次計画」という。)を策定し、公表しなければならない。

6 市は、児童虐待を受けた子どもがその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うとともに、親になるための準備、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた子どものケア並びに児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方、学校の教職員及び児童福祉施設の職員が児童虐待の防止に果たすべき役割その他児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行うものとする。

7 市は、前各項に定めるもののほか、児童虐待の防止等に関し、必要な施策を積極的に推進するものとする。

(保護者の責務)

第6条 保護者は、児童虐待を決して行ってはならず、子どものしつけと称して、体罰を与えてはならない。

2 保護者は、子どもに愛情を持って接するとともに、子育てに関する知識の習得に努め、児童虐待が子どもの心身の健やかな成長及び人格の形成に重大な影響を与えることを深く認識し、子どもの自主性及び自発性を育む健全な養育に努めなければならない。

3 保護者は、子どもの心身の健康の保持、安全の確保等に当たっては、年齢に応じた配慮を怠ってはならず、特に乳幼児については、自ら心身の健康を保持し、又は安全を確保するための能力がなく、又は著しく低いことを認識しなければならない。

4 保護者は、子育てに関し支援等が必要となった場合は、積極的に子育て支援事業を利用するとともに、地域活動に参加すること等により、地域社会から孤立することのないよう努めなければならない。

5 保護者は、男女の別を問わず、子育てその他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たさなくてはならない。

6 保護者は、市又は児童相談所が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力しなければならない。

7 保護者は、子育てに関して、市、児童相談所又は関係機関等による指導又は助言その他の支援を受けた場合は、これらに従って必要な改善等を行わなければならない。

(市民等の責務)

第7条 市民等は、児童虐待の防止等について理解を深め、児童虐待を防止するとともに、市が実施する児童虐待の防止等に関する施策に協力するよう努めなければならない。

2 市民等は、児童虐待の予防のための子育て支援に関する活動その他の児童虐待の防止等に関する活動に積極的に参加するよう努めなければならない。

3 市民等は、市又は児童相談所が行う子どもの安全の確認に協力するよう努めなければならない。

(関係機関等の責務)

第8条 関係機関等は、児童虐待を防止するよう努めなければならない。

2 関係機関等は、子どもを児童虐待から守るため、市が実施する児童虐待の防止等に関する施策に協力するとともに、互いに連携するよう努めなければならない。

3 関係機関等は、市又は児童相談所が行う子どもの安全の確認に協力するよう努めなければならない。

4 学校、児童福祉施設、病院その他子どもの医療、福祉又は教育に業務上関係のある団体は、児童虐待に対して適切な対応をするための体制の整備に努めなければならない。

(児童虐待の早期発見)

第9条 市、市民等及び関係機関等は、児童虐待の早期発見について大きな役割を担っていることを認識し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。

2 市長は、関係機関等が児童虐待を早期に発見し、迅速かつ的確に対応するための指針(以下「早期発見対応指針」という。)を策定しなければならない。

3 関係機関等は、早期発見対応指針に従って、児童虐待の早期発見及び早期対応に努めるものとする。

(人材の確保及び資質の向上)

第10条 市は、関係機関等が児童虐待を早期に発見し、その他児童虐待の防止等に寄与することができるよう、研修等必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、児童虐待に関する通告、通報、相談及び情報の提供に応じる体制を整備するとともに、必要に応じて学校その他市が必要と認める施設に対し、心理、福祉及び法律に関する専門的知識を有する者を派遣して児童虐待に関する助言及び支援を行うため、その人材の確保について必要な措置を講じなければならない。

3 市は、職員に対して、児童虐待の防止等に関する教育及び研修を行い、児童虐待の防止等に関する施策について周知及び啓発に努めなければならない。

(児童虐待に係る通告)

第11条 市民等及び関係機関等は、児童虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合は、速やかに、市又は児童相談所に通告しなければならない。

(情報の共有)

第12条 市は、児童虐待に関する情報について、児童相談所、警察及び児童虐待の防止等のために県が指定する拠点病院との適切な共有に努めるものとする。

2 市は、子どもの安全の確保のために必要があると認めるときは、児童虐待に関する情報について、関係機関等と共有することができる。

第2章 児童虐待の予防のための子育て支援

(子育てをするために必要と思われる情報の提供)

第13条 市は、子育て家庭及び地域の人々に対して、子育てをするために必要と思われる情報の提供を行うものとする。

(子育て家庭に対する支援)

第14条 市は、子育て家庭に対して、相談支援、訪問支援等必要な支援を行うものとする。

2 前項の支援に際しては、栄養、衣類、住居及び教育に関して、特に配慮しなくてはならない。

(団体に対する支援)

第15条 市は、地域における子育て家庭を支援するための事業を促進するため、当該事業を行う団体に対して、子育て支援に関する専門的な知識の提供その他必要な支援を行うものとする。

(地域における子育て支援の取組)

第16条 市内において子育て支援に関する活動を行う団体(以下「子育て支援団体」という。)は、関係機関等と連携し、保護者に対して、子育てに関する情報を積極的に提供する等地域における子育て支援に努めるものとする。

2 子育て支援団体は、地域と連携し、子育ての負担感の軽減を図るため、保護者に対して、保護者同士がその子どもとともに交流することができる機会の提供に努めるものとする。

3 市及び市民等は、地域において、子どもが安全に安心して過ごすことができるよう子どもの居場所づくりに努めるものとする。

第3章 児童虐待の防止等のための取組

(児童虐待防止推進月間)

第17条 市民等の間に広く児童虐待についての関心と理解を深めるため、児童虐待防止推進月間を設ける。

2 児童虐待防止推進月間は、毎年11月とする。

3 市は、児童虐待防止推進月間において、関係機関等、子育て支援団体等その他児童虐待の防止等に関係する機関、団体等と連携し、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(子どもに対する児童虐待に関する知識の普及及び相談先の周知)

第18条 市は、子どもに対して、児童虐待に関する知識の普及及び児童虐待を受けた場合の相談先の周知を行うものとする。

2 前項の児童虐待に関する知識の普及等に当たっては、必要に応じて、学校等と連携を図るものとする。

(通告に係る子どもの安全の確認等)

第19条 市は、児童虐待に係る通告を受けたときは、直ちに調査を行い、必要があると認めるときは、通告を受けてから48時間以内に当該通告に係る子どもの安全を確認するものとする。家庭その他から児童虐待に関する相談等があった場合についても、同様とする。

2 前項の通告に係る子どもの保護者及び保護者以外の同居人は、同項の規定による安全の確認に協力しなければならない。

3 市は必要に応じ、近隣住民、警察、児童相談所、学校の教職員、児童福祉施設の職員、住宅を管理する者その他子どもの安全確認のために必要な者に対し、協力を求めるものとする。

4 前項により、市から協力を求められた者は、安全確認に協力するよう努めるものとする。

5 市は、通告をした者又は相談等をした者が特定されないよう必要な措置を講じなければならない。

(子どもに対する保護及び支援)

第20条 市は、児童相談所、警察等と連携し、児童虐待を受けた子ども(児童虐待を受けるおそれのある子どもを含む。以下同じ。)を児童虐待から守るため、当該子どもに対して、必要な保護及び支援を行うものとする。

(保護者に対する指導及び支援)

第21条 市は、児童相談所等と連携し、児童虐待を受けた子どもが良好な家庭環境で生活することができるよう、その保護者に対して、必要な指導及び支援を行うものとする。

(保護及び支援を行うための指針の策定)

第22条 市長は、児童虐待を受けた子ども及びその保護者の状況に応じて適切な保護及び支援を行うための指針を策定しなければならない。

2 市長は、関係機関等に対し、関係機関等が行う適切な保護及び支援に資するため、前項の規定により定めた指針を示すものとする。

(保育所等の優先入所)

第23条 市長は、保育所又は認定こども園の入所者を選考する場合において、児童虐待を受けた子ども等特別の支援を要する子どもを保育所入所の必要性が高いものとして優先的に取り扱うものとする。

(子どもの家庭復帰及び自立に係る支援)

第24条 市は、児童相談所等と連携し、児童虐待のため里親への委託、児童養護施設等への入所等の措置が採られた子どもの家庭復帰及び自立に当たって必要な支援を行うものとする。

(転出する場合の措置)

第25条 市は、児童虐待を受けた子ども及びその保護者が市外に転出する場合は、当該子ども等の情報を転出先の地方公共団体へ伝達するなど児童虐待の防止等に必要な措置を講ずるものとする。

(地域における児童虐待の防止等のための取組)

第26条 市民等は、地域における子どもに対する見守り活動等を行うことにより、子どもとの関わりを深めるよう努めなければならない。

2 市民等は、子どもとの関わりを通して、児童虐待に関し対応が必要であると判断したときは、子どもに代わり、市、児童委員等に連絡又は相談するよう努めなければならない。

第4章 雑則

(守秘義務)

第27条 第12条第2項の規定に基づき、情報を共有した者は、共有した情報を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

(市長の報告)

第28条 市長は、毎年、児童虐待の発生状況、通告の状況、児童虐待に係る市の施策の実施状況その他の市内における児童虐待に係る状況について年次報告として取りまとめ、議会に報告し、その概要を市民に公表するものとする。

(財政上の措置)

第29条 市は、児童虐待の防止等に関する施策を推進するため必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)

第30条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成31年4月1日から施行する。

(年次計画等の策定)

2 第5条第5項に定める年次計画、第9条第2項に定める早期発見対応指針、第22条第1項に定める保護支援指針については、この条例の施行の日から1年以内に策定するものとする。

飯塚市の子どもをみんなで守る条例

平成30年12月28日 条例第43号

(平成31年4月1日施行)

体系情報
第8編 社会福祉/第3章 児童・母子福祉
沿革情報
平成30年12月28日 条例第43号